Chako

2020年1月14日3 分

ケニアのM-Pesa: モバイルによる急激な顧客基盤の拡大

フィンテックなどのによる金融業界への影響をまとめた「BANK 4.0 未来の銀行」を読んでいます。その中から、「モバイルによる超高速の顧客獲得」例の筆頭とも言える、ケニアのM-Pesaの例をまとめてみました。

BANK 4.0によれば、金融機関が顧客に提供する最も基本的な価値と言うのは3つしかない。

1.価値貯蔵:お金を安全に保管

2.資金移動:お金を安全に移動

3.信用アクセス:必要時にお金が借りられる

そのうちの第一番目の「価値の貯蔵」、これは顧客が自分のお金を安全に預かってもらいたいと言うニーズに応えたもので、銀行であれば預金口座、それから投資口座もこのカテゴリーに入る。

この金銭の貯蔵と言う価値の提供を、既存の銀行であれば支店で口座を開いてもらうことで提供していたのだが、「支店に行って口座を開く」というモデルが崩れつつあり、モバイルで口座をすぐに開設できることが、既にかなりの国で可能になっている。

これが一番急激に浸透した例がケニアのM-Pesaと呼ばれる、通信会社が提供するモバイルマネーサービスだと言われる。

画像:Wikipedia

BANK 4.0によれば、たった15年前、2005年にはケニア人口の70%が銀行口座をもたず、お金を安全に貯めておくこともできなかった。(タンス預金などは「安全」と言わない前提)

ところが2018年現在ではケニアに住む大人はほぼ100%がモバイル資金口座を利用したことがある、とのことである。

M-Pesaはケニアで2200万人が使っているということだが、これはケニアの人口のうち、成人人口のほぼ100%にあたる。

それでは金融サービスの顧客をすべてモバイル会社に取られてしまうかというと、そればかりでもない。このM-Pesaとの協業により、急激に顧客獲得を成し遂げた伝統的な銀行もある。

「ケニア商業銀行」は設立124年を擁する伝統的な銀行だが、M-Pesaとの協業以前には100年を超えても顧客の口座数が200万口座であった。それが、M-Pesaとの協業を始めて1年間で顧客口座が750万口座に達した(当初の目標は初年度で250万口座の獲得)。新規の顧客活動獲得はすべてモバイルによるものだった。

こういった、「モバイル」と「新規口座獲得」をつなげて劇的な結果を出した例は、米国では最も急伸中のネオバンク、BankMobileの例がある。

同社は通常の銀行、信用組合などの支店での口座開設の約10,000倍の勢いで新規口座を毎週獲得し、現在全米で5000以上ある金融機関のうち、トップ15に躍り出ている。大学との提携による学生口座の提供の他に、T-Mobileとの提携に寄るところが大きく、現在年間約30万の新規口座を獲得しているとのことである。

(BankMobileの社長、 Luvleen Sidhu 氏によるFinovate NYの基調講演はYouTubeにアップされていますので御参考に)

(ところで余談だが、M-Pesaのサイトを見ていたら送金の手段の中で「刑務所に入所中の人に送金」というメニューがあってビックリ。そういうニーズって多いんでしょうかね。)

#フィンテック #M-Pesa  #モバイルバンク

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