Chako

2020年3月9日3 分

銀行は商品を売り、フィンテックは体験を売る

新しいデジタルバンキングについて述べた本、「BANK 4.0」の中に、フィンテック銀行(またはチャレンジャーバンク)と既存の金融機関がホームページで送っているメッセージの比較があります。

その中でまずフィンテック系の銀行の一貫したメッセージとしては

  • 既存の銀行に対する不満

  • 過去の金融商品とは違う

  • 境界をなくす

  • 生活を簡単に

等に集中しています。

本の中ではネオバンクの例としてSimple、Moven、Atom Bank、Monzoなどが挙げられていますがメッセージをまとめると一貫して、既存の金融体験ではなく、簡素化しより便利にするというメッセージが見えてきます。

これに対して既存の金融機関のメッセージはどうでしょうか。

既存の銀行の場合にはホームページを訪れた時、または支店を訪れた時に一貫して受けるメッセージは、どれだけ良い商品があるか、競合に対して自行の商品を選んでほしい、というメッセージです。

それでは具体的にちょっといくつかネオバンクと大手銀行のホームページを見てみましょう。

まず、米国のネオバンクとして成長が著しいチャイム(Chime)では、

Banking Made Awesome(銀行をすばらしくしたぞ!)

画像:Chime

というメッセージとモバイル場面でのイメージ。それに、

NerdWalletという第三者による評価でイメージと信用のアピールをしています。具体的な商品の説明は全くありません。

次にこれも急伸中のドイツのモバイルバンク、 N26。

上の画面のように、非常にすっきりしたHPで

「世界に愛されるモバイルバンク」
「銀行が速く、柔軟で、透明性を持つのは無理だと思いますか?ちょっとまって。世界が愛するモバイルバンキングを体験してください。」

これも、具体的な商品の説明は何もないですね。

最後に、米国の学生ローンから出発したSoFi(ソファイ)

Everything you need to Get Your Money Right

(お金を正しく管理するためのすべてはここにあります)

これも具体的な細かい商品についての説明はない。

それでは大手の場合はどうでしょうか。

まずアメリカの最大手銀行、Bank of America(バンカメ)。

ホームページを開くと個人用ホームページではクレジットカードの比較。中小企業用のページにおいては自動車ローンと確かに商品の宣伝が前面に出ていますね。

次にシティーバンク(CitiBank)

これもまず米国用のホームページの筆頭に、やはりシティーのカードの宣伝が出ています。

それでは邦銀大手ではどうでしょうか。

まずは三菱UFJ銀行

すっきりしたホームページですが、1番上に小さくクオリティーをうたったスローガンはあるものの、このホームページからは銀行としてどういう特徴を打ち出しているのか確かにちょっとわかりづらいです。まぁ日本人であれば特に今更、特徴など言わなくても知っているのが当然、ということかもしれません。

次にみずほ銀行

これも個人のお客様向けのホームページの最初ではまずキャンペーンとか教育ローン等、確かにセールスや商品のアピールが中心になっています。

最後にちょっと、上記の議論とは反論的になりますが、米国の大手投資銀行Goldman Sachs(ゴールドマンサックス)によるフィンテック銀行として急激に伸びたMarcus。個人向けローンと貯蓄口座を提供していますが、この預金貯蓄口座の伸びは、主に当初2.25%という非常に高金利の貯蓄口座でお客を獲得しており、このホームページも預金の利回りが前面に出ています。

これはイメージと言うよりも商品のアピールを中心にして成長したのですが、他行の預金金利と当初2%も違う高預金金利という際立った特徴があれば、商品がそのままイメージの主張になるという例です。

以上、特に、フィンテック銀行のアピールがいいとか既存の銀行のやり方が悪いとかではないのですが、送っているメッセージ・主張にこれだけ際だった違いがある、ということですね。

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