【リモートワーク】Googleに学ぶリモート・ワークスタイル
更新日:2020年5月28日
コロナウィルスの状況下で、シリコンバレーのテクノロジー企業は基本的に在宅勤務の状態ですが、実は約1年前の2019年4月に、最大手テクノロジー企業のGoogleが大規模なリモートワークに関する調査・リコメンデーションをしています。今回はこれについてまとめてみました。
元は「オフィスでいっしょに」というカルチャーが強かった
多分10年ほど前だったと思うのですが、Googleにエンジニアとして勤めていた友人にGoogle本社を案内してもらったことがあります。
その時に友人が、「Googleはみんなでリアルにオフィスに来て一緒に働くという指向が非常に強い。だから在宅勤務は奨励されない」と言っていました。その頃すでに、シリコンバレーのソフトウェアの会社では在宅勤務がかなり浸透していた頃なので(全米でも、2012年にいはアメリカの人事担当者業界組織で、46%の企業で在宅勤務を認めている、と発表しています)それに逆行するような社風なのかな、と印象に残ったのを覚えています。
1つの要因は、Googleは「チーム全員が集まってブレーンストームする上で一人一人が持っていた以上のアイディアが出てくる」というクリエイティブな社風を非常に重視しており、当時はまだリモートワーク用のシステムも今ほど進んでいなかったため、やはりリアルに顔を合わせていた方がチームとしてのアイデアが出やすい、ということだったのだと思います。
Googleの社風をYahooに持ち込んだメリッサ・マイヤー氏
ちょうどその頃、具体的には2012年だったと思いますが、そういったGoogleのリアルのカルチャーの中で育ったメリッサ・マイヤー氏がYahoo!のCEOに就任、すぐに全社でリモートワークを禁止するとの通達を出して大変物議をかもしたことがあります。
結局、当時のYahoo!の会社としての問題はリモートワークを禁止し、オフィスに出社させただけで改良できるようなものではなく、この方策は成功しなかったとされています。また、この禁止命令自体、時代に逆行すると取られたようです。
専用通勤バスを提供
一方Googleは、コロナウィルス前までは、シリコンバレー地域では通勤渋滞がひどくなり自家用車のでの通勤に非常に時間がかかるため、従業員向けに専用の豪華な2階建て通勤バスを出し、バスの中でWi-Fi環境も整備しているためゆったりと座って行き帰りの通勤の中でも仕事ができる環境を、少なくともシリコンバレー本社の社員には提供していました。
従業員が増え、オフィスも世界中に
そんなGoogleの、反リモートワークと言えるようなカルチャーが、最近ではどうなっているか気になって調べてみました。
Googleはご存知のように今では世界最大級の巨大なテクノロジー企業となっており、従業員、契約社員まで入れて世界50カ国、150の都市に散らばった組織となっています。
人事分析サーベイ
Googleは「データを重視する」企業として有名ですが、リモートワークについてもこれまでの方針で良いのかどうかの確認のために同社は、2019年4月に大規模な人事分析調査を行いました。調査は同社の10万人近くの従業員の内5,000名超を対象にしたアンケートと、約100名を対象にしたフォーカスグループについて行われました。
この大規模な調査と結果の分析からGoogleが分かった事は、リモートワークを成功させるためには、正式なコミュニケーションと非公式なコミニケーションの情報が大変大切だということ。
コミュニケーションの問題はGoogleにとって大変重要です。今回の調査の結果、同社の社内会議の内48%が複数の社屋からの社員を含み、39%が複数の拠点から、また30%が異なる時間帯からのメンバーを含んでいることがわかりました。
なので、既に「全員が1カ所に集まってするミーティングだけで会社運営」は無理だったわけです。
結果とアドバイス
この調査の結果同社では、リモート・チームワークを成功させるに当たってじゅうような幾つかの「発見」を発表、特に重要な点をリコメンデーションとしてブログ上で発表しています。
この中で全体としては、
まず、全世界にわたる同社の社員で、出社しているかリモートかにかかわらず、個人やチームとしての生産性、パフォーマンス評価、および昇進などに特に差はないことがわかった。また仕事への優先順位の付け方、ワークライフバランスなども、リモートで働いている社員も出社している社員と特に差がないこともわかった。
としています。
一方、リモートワークの解決すべき課題としては、
リモートオフィスの社員は、チームと精神的に離れていると感じたり、チームの同僚から地理的に離れていることから来るフラストレーションはあり、それを常に調整していく事は重要である。
としています。
これらの課題にたいする対策の内トップ3のリコメンデーションは以下の通りです。リモートワークのチームの時間調整をし、ビデオ会議を設定しコミュニケーションを図って行くには、社内で「ちょっと同僚のデスクに立ち寄って」「コーヒーを片手に話をする」よりコーディネートの能力を必要とするので、ノウハウが必要になるわけです。
リコメンデーション
「人間」としてお互いを知ることが大切
ミーティングをカジュアルな会話で始める。対面のミーティングではいきなり議題に入らず、その日の天気、家族、スポーツチームの話題などお互いに相手を「人間として」知ることが出来、打ち解けられるような、仕事以外の雑談で始めることが多い。
リモートミーティングは時間が短いことが多いので、ここでの雑談にあまり時間を使えないが、そうかといっていきなり議題に入るとドライすぎてお互いの人間としての信頼関係を築くのが難しい。
テクノロジーは適切か
リモートワークの管理者は、スムーズなコミュニケーションの確保のため常に、ハード・ソフト・通信がアップデートされているかを把握し対応しておく必要がある。
「境界線」を引く
いつでも同僚の時間に割って入って異なる時間帯にいる同僚に、常に都合の良い時間帯を聞き、場合によってはお互いの折衷で時間を交代で決める。
リモートの他に「リアル」を取り入れバランスを取る
どのくらいの頻度で実際に対面でのミーティングが必要か、ビデオ会議で良いのかのバランスを考える。場合によっては出張を含めてチームのメンバーが顔を合わせる機会を作る。
逆に、対面である必要がない日々のミーティングではビデオ会議とし移動時間を避ける。
以上、いかがでしょうか。「当たり前といえば当たり前」と感じる一方、これを数値化し徹底するのは世界最大・最新の技術企業Googleだから可能、という反応もあるかも知れません。
上記の調査・リコメンデーションはコロナ以前、約1年前の2019年春のものですが偶然にも、現在の状態を予想した形になったともいえます。現在シリコンバレーでは、先日のFacebookの発表にもあるようにコロナ後も、社員の半数近くにリモートワークを許可する、とする大手テクノロジー企業が続々と出ています。今回、無理にでも在宅ワークをしてみて以外に生産性が落ちなかった、かえって上がったとの認識があり、リモート・テクノロジーの進化を相まってこの傾向は、コロナ後でも続くと思われます。
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