未来の銀行支店のあり方
ちょうど1ヵ月ほど前に「銀行の支店は必要か」という題のブログ記事を書いたのですが、今朝ほど見ていたオンラインの
言うイベントでの発表の中で、今年の銀行業界での議論の1つに引き続き、「支店が必要かどうか」と言う議論がなされている、というのがありました。
数から言うと確かに米国では銀行の支店は減っています。
右図にあるように、この20年で全米では銀行の支店数が減った地域の方が圧倒的に多く、60%を占める。
それでは、前のブログに書いたUmpqua Bankのように非常に新しいデザインの良い支店を作れば人が集まるのか?そもそも、「人が集まって」もらうことが必要なのか?
それには、そもそも銀行の支店の役割が何なのかと言うことを突き詰めて考える必要がありそうです。
顧客との密接な接点を持ち相談に乗れる、と言うことであれば、そもそも顧客に銀行まで来てもらう必要があるのか?
特に現在、新型コロナウイルスの影響でアメリカではいわゆるロックダウン、特別な用がない限り家から外出しないようにと言う法令が出ており、日本でも、リモートワークが急激に増えていると聞きます。
そしていろいろなミーティングをズームなどを始めとするビデオ会議でしてみると、結構、支店での対面業務も実はスマホを使ってビデオ会議でできてしまうケースが多いのではないか。
確かに斬新な設備を備えた新しい支店であれば顧客の預金獲得の量が多いと言う調査もあります。例えばこちらのチェース銀行の新規支店、開設1年で2500万ドルを超える新規預金を獲得している支店が約半数ある。米国では2500万ドルの預金獲得が収支バランスが取れる境界線とされているそうです。
一方で、全く支店持たない新しい貯蓄口座、投資銀行ゴールドマンサックスによるMarcusが、2016年の開始から4年弱で既に600億ドル(6兆円超)の預金を獲得している。これはもちろん全社レベルなのですが、桁違いですね。
こうしてみるとそもそも、新規口座、預金の獲得が支店の業務の大事な部分かどうかと言うことにも疑問が出そうです。
新規口座獲得のためには支店はコストが高いので、これを無理に実行しようとするとどうなるか。
ダーティー・マネー
最近見たドキュメンタリー、「ダーティー・マネー」という、企業の悪質な金儲けをついた番組の第一話にその極端な例が出ていました。
数年前の、米ウェルズファーゴ(Wells Fargo)銀行の架空口座スキャンダルです。
ウェルズファーゴは米国一、というか世界一の規模の銀行ですが、さらなる成長を目指す余り、新規口座の獲得のために、会社ぐるみで支店の従業員に過剰なノルマを課し、従業員がそのノルマ達成のため違法行為に当たることや架空口座の開設までしており、数年にわたる調査や訴訟等の挙句、最終的にWells Fargo銀行は約27億ドル、3000億円ほどの罰金を払ったとされています。
事件のごく一例ですが、セントヘレナという(ワインで有名なナパバレーの北の方)人口5千人ほどの小さい街の支店で、従業員8名が、各自1日6件の新規口座を獲得するノルマを課せられ、家族や親戚に頼み込み一人で複数の口座を作ってもらい、果ては犬や猫の名前の口座まで作ったと言う極端な話。
人口5000人の街ですから、ノルマを達成しているとすれば約半年で街の人口の全員がこの銀行の顧客になり、それ以上の獲得は無理という計算。
一方、アメリカの小さな街では、銀行がどんどん支店を閉めていくことに対して、対面でなければできないような相談をしたい顧客が抗議デモをしているケースもあります。支店を閉める前に、彼らが支店に求めているモノは何か、考える必要もありそうです。
もちろん、この2,3年のうちに銀行の支店が全てなくなるとは思えませんが、この先の支店は、規模や見栄えでなく、支店に本当にどういう役割が必要なのかと言う振り出しに戻って考えていく必要がありそうです。
ちなみに上記、Ron Shevlin氏のプレゼンでは未来の支店の形の下として下記の例などが出ています。
参考:
Ron Shevlin氏プレゼン
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