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2021年10月19日4 分

ザッポス:返品自由のビジネスモデルを支える細かい工夫

最終更新: 2021年12月13日

昨年新型コロナの影響で、大幅に発展したビジネス形態の一つがEコマースです。

顧客が小売店舗へ足を運ばなくなったため、オンラインでの販売が急激に伸びたわけですが、その急成長の要因の一つに“返品自由”があります。

オンラインで購買する場合、実際に手に取ってみないと分からないものが多いので、特に衣料など写真で見ただけではわからないものでは、簡単に無料で返品できることが購買の大きな要因になります。

しかし販売する側にとっては、これは大きなコストの要因となる頭が痛い問題でもあります。一度封を開けて試着し返品されたものは、もう新品としては売れず、通常は割引価格で返品専用の業者に流す必要があるからです。

今回は、設立当初からごく簡単に無料で返品を受け付け、急成長したオンラインの靴販売業者、Zappos(ザッポス)を実際に利用して、気づいた点を挙げてみました。

ザッポスとは?

ザッポスは、顧客サービスとファン層が多いことで知られた、靴と衣料品のオンライン小売業者です。

1999年に設立された同社は、 2009年に10億ドルでAmazonに買収されました。ウェブサイト、電話注文、世界各地にあるカスタマーサービスセンターを通じて、靴や服などを販売しています。

米国内での購入はすべて送料無料で、理由の如何を問わず返品も可能です。

ザッポスのミッションステートメントは、"最高の顧客サービスの提供 "です。常に顧客からのフィードバックに耳を傾け、対応している、としています。

同社では、

「返品無料は、最高のカスタマーエクスペリエンスを提供するための、当社の戦略の重要な一部である」

としています。

「靴のオンライン販売」は非常に難しいとされていた

従来、靴や衣服など身につける物のネット販売は、非常に難しいとされていました。

Amazon 創業者のジェフ・ベゾスは、 Amazon 設立の前に、インターネットで販売するのに適しているものを約30種類の中から考慮し、まず最初に扱うものとしては書籍が一番適しているという結論に達したと言われます。

それは書籍が比較的軽くて搬送しやすく、また出版数が多いため、一般の町の書店ではベストセラー以外の物を並べるのが難しいという点もあります。

更に書籍の場合は、まず手に取ってから身につけて試さないと合うか合わないかわからないということはないので、ネット上でチラッと立ち読みでもできれば、それでわりと正確に購入の判断が出来ます。

一方、衣類や靴などの試着してみないとわからないものは、従来は実際の店舗へ行って試着するのが普通でした。

特に苦痛なのは同じサイズでも足の形によって合う合わないがあり、しかもそれによって履き心地や疲れやすさなどが非常に違ってくるので、ネットで見ただけでは買えないと思っていました。

それを大幅に変えたネット企業がザッポスなのですが、その決め手は品揃えやその品物の特徴によって検索できる便利さもさることながら、いくら注文しても無料かつ無条件で返金返却できるというところが大きいと思います。

今回、遅まきながら体験してみて納得

というわけで、ネット上で靴を買うのは難しいと思い込んでいた私が今回、遅まきながらザッポスからの購入をお試ししてみました。

実際に試してみて初めて、「なるほど。これで返品自由をサポートする工夫がちょこちょことされているのか」と納得しました。

前述のように、オンラインショップにとって返品できることは顧客体験の上で非常に大事ですが、一方コスト面から考えると非常に頭痛の種です。

少し前にドキュメンタリー番組で、返品された品物がどうなるかを追跡していましたが、一度箱を開けて中袋も破りタグも取ったものが返品された場合、これは普通の新品としては売れません。

なのでこれらを引き取り、専用の純中古市場で販売するのを采配する、専門の業者が存在します。

ただネットショップにとっては、当然この専門業者に引き取ってもらう場合、かなりの割引をしないといけないわけです。

今回実際にザッポスで2足買ってみて、1つはサイズが合わなかったので返品しましたが、非常に簡単でした。

その大きな理由として、普通アメリカで靴を買うと付いてくるプラスチックの紐についたタグ等が、何もついていないのです。

通常、箱を開けたり袋を破ってこのタグを取ってしまうと、もう新品として売るのは難しいのですが、ザッポスの商品は箱の中にタグなしラベルなしの靴がそのまま入っているだけなので、返却する時は基本的に新品と全く変わらない状態で返却できます。

(ちなみに2回めの購入では写真のように、タグは付いているが、とっても簡単に元通りに付けなおせる鎖タイプの紐付きでした。)

しかも最近は家にプリンターを持っていない人も多いので、返却用のラベルをプリントしなくても、UPS(配送業者)の店舗に持って行ってスマホでQRコードを見せれば、それをスキャンしてラベルをプリントし、箱に貼ってそのまま送ってくれます。

なので返品が無料なだけでなく、いわゆる「フリクション(障壁)」が非常に少ないのです。

このように、送料無料でいくらでも返品できるモデルなのは、コストを抑えるための細かい工夫がされているのでした。

#Eコマース 

#返品サービス 

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