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2021年6月22日4 分

コロナによって急速に進んだオープンバンキング

最終更新: 2021年12月13日

本年の春のFinovateのアナリストパネルの中でもう一つ面白いと思った発表は、やはり金融テクノロジー専門のコンサルティング会社セレント(Celent)によるもので、コロナによって急速に進んだオープンバンキングの現状と課題に関するものです。

セレントでは、オープンバンキング化は以前から進んでいたが、コロナによって約2年から5年分の急速な前進があったとしています。金融機関では顧客開拓から口座開設、 サービスに至るまでデジタルの導入が飛躍的に拡大した1年でした。

そういった急速なデジタル化の実際の導入には、自社開発も一部あるが、テクノロジーに関してはパートナーおよびベンダーからの調達が圧倒的に多いようです。

2020年夏の時点での調査によると金融機関による投資の優先順位ではデジタル導入が最優先、97%という圧倒的な数字でした。

出所:Celent

さらにデジタル化の投資の中ではモバイルバンキングおよびオンラインバンキングが多く、調査対象となった金融機関のうち90%がこの二つの部門への投資を増やすと回答しています。またさらにその中の個別の対象としては、コールセンターへの技術投資が圧倒的に多いようです。

これは一つには特にコロナのステイアットホームによって消費者側がウーバー・イーツやドアダッシュなどの新しい宅配サービス、食料品のオンラインショッピングなどの新しいデジタル体験に慣れ、銀行にも同様なレベルのデジタル体験を期待しているということがあるようです。

オープンバンキングのエコシステム

オープンバンキングとその部分部分にはマーケットプレイス、オープンバンキング、サービスとしてのバンキング、エンベデッドファイナンス、APIマーケットプレイスなど、関連するさまざまな名称があり、必ずしも明確な定義がないまま色々な名称が飛び交っている面もあります。ただ、この一連の金融のエコシステムは相互運用性という概念を中心にしてまとまり始めています。 これらをある程度正確に定義することで、どこで価値が本当に生み出されているのかを見極めることができるとしています。

簡単に言うとオープンバンキングは第三者が顧客の口座やデータにアクセスすることを可能にするもので、従ってオープンバンキングを構築する上での最初のステップは、決済・支払いであることが多いとのことです。

出所:Celent

既存製品に新機能を持たせる

またオープンバンキングによるデジタル化は必ずしも新しい製品や商品を導入することだけではなく、既存の製品に少しずつ機能を積み重ねることで、一段と進んだ顧客体験を提供できるようなケースもあります。

例として挙げられていたネオバンクのチャイム(Chime)やバロー(Varo Money)では即日に給料が引き出せるようになっており、また急伸中の欧州のネオバンク Revolut では外国為替取引をより有利なレートで行えるようにしています。

画像:Chime

このように、コロナによるデジタル化の急伸は金融だけではなく様々な業界に渡っています。銀行業界においても顧客が支店に足を運ぶケースも非常に減りました。今まで対面で行っていたビジネス取引がオンラインで済むということが分かってからは、その顧客のかなりの割合がもう支店取引には戻らないと言われています。そこでより進んだデジタル体験を提供できなければ、場合によっては顧客がネオバンクやより進んだデジタル機能を持つ金融機関・他業種に乗り換えることも有るわけです。

従来から進んでいたオープンバンキングのエコシステムの取り入れが早急化されている中、急速にいっぺんに取り入れることは無理でも、一つ一つの昨日の積み重ねなのでとにかく顧客体験に一番影響を与える部分からの変革が望まれる、というのがこのプレゼンテーションの趣旨でした。


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