銀行の支店は必要か
更新日:2020年3月18日
数ヶ月前ですが、日本からのお客様を案内してサンフランシスコ市内でちょっと面白い銀行の支店をピックアップして訪問してみようという機会があったのですが、実はそこでちょっと困った。
いわゆる面白い支店というのが、数時間かけて回るほどないのです。
2000年代初頭の「面白い支店」ブーム
確か2010年前後までは、米国の大手銀行のいくつかが、お客様になるべく便利で、なるべく楽しく銀行の支店に来てもらおうと言うことで、いろいろ工夫を凝らしていた時期がありました。
例えばコーヒーショップと銀行の支店を併設し、待ち時間があればコーヒーショップに行ってもらうとか、クリーニングサービスを併設し、いちど銀行の支店に足を運んだからには、クリーニングも合わせてピックアップ出来るよう、便利にしておこうなどのアイディアがありました。
ところが今回ではそういった変わり種があまり見当たらなかった。
強いて言えば、カラフルな楽しいディスプレイ等で有名なUmpqua Bankの支店、それからユニオンスクエアの近くで、観光客にピカピカのテクノロジーの様子などをアピールする目的であると思われるChase Bankのフラッグシップ支店、などがあるかと思います。
ただ正直に言って特に取り立てて便利なサービスをしているわけではなく、見かけが華やかなだけかなあ、と。
Umpqua Bank
Address: 450 Sansome St Suite 120, San Francisco, CA 94111
支店でなければ出来ない業務はあるか?
また、先週金融関係のお客様にレクチャーをした際、支店で行う必要がある銀行業務はあるのかと言う質問を頂き、そのときには、「ビジネス向けの融資はさすがに、検討内容や書類が多いので今のところは支店で対面の方が良いのではないですか」と答えましたが、後から考えてみると厳密には多分必要がない。
最近は、Zoomなどの普及でオンライン面談に慣れた人が増えており、そういったお客様であればかえって支店に来ていただいて書類を見るよりも、同じ書類をオンラインで画面シェアをして説明しながら面談した方がおそらく、ちょっと慣れれば便利なのではないかと思います。
「支店閉鎖」は差別か
この点、アメリカの銀行のデジタル化でオピニオンリーダーとされているCornerstone社のRon Shevlin氏が2019年3月にフォーブスに、「銀行の支店は必要か」と言う内容の寄稿をしています。
Shevlin氏は基本的には支店は必要ない。また、低所得者のいる地域で支店が閉鎖されているのは差別ではないかと言う意見も現実にはそぐわない、としています。
調査によれば、特に低所得層がパソコン上などが使えないため支店が必要だと言う統計的根拠は何もない。逆に高齢者、富裕層、または自営業者などの階層が銀行の視点を多く使用しているとのこと。
また銀行の支店ができたそもそもの理由は、デジタルがなかった時代に、銀行員を収容し、現金を安全に保管にする保管するために銀行が支店を設立した。
すなわち、お客様に遠くから大きな本店に来ていただくよりも、どうしてもリアルでなければできない業務が多く、特に現金の取引があったため、地理的に分散した場所に従業員を移しサービスを拡張した。
それであればデジタル化が進めば支店は本当にいらないのではないか。
リテール小売店舗と同じ運命?
氏は、銀行の支店はリテール小売店舗と同じ道をたどり、すなわちどんどん数が減る、言っていますがこれはひとつだけ間違いがあると思う。
金融機関の支店は小売店舗よりもっと必要がないと思うのです。小売店舗であれば、例えば洋服とか生鮮食品とかどうしても手に取ってみたい、試着してみたい、目で見てみたいと言うことがありますよね。
それに比べて、金銭取引をするのに現金に触ってみないと納得できないと言う方はほとんどいないと思います。
(一部アングラマネーの場合は現金である必要があるらしいけれど)
「後継者バンク」
ただ、現時点で、特に高齢者などITに馴染んでおらず、無理をすると間違いをしてしまう可能性も多く、対面の方が安心できると言うお客様も特に日本ではまだまだ多いかもしれません。
それに対して現時点で無理矢理、全部オンラインで済ませろと押し付けるよりも、今は何よりも顧客のニーズを尊重し、両方の選択を残しておいて、徐々に可能な顧客からデジタルを試し、移行してもらう。
と言うあたりが現実的ではないでしょうか。
これについてはSuccessor Bank「後継者バンク」を別に作るというやり方が試されているのですがこれについては近いうちに書きます。
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