フィノベート:地域金融、横割りから縦割りへ?
更新日:2021年12月10日
フィノベート基調講演からのまとめ、第2弾です。
地域金融というか特定のセグメント向けの金融サービスが、「地域」という横割りから特定のセグメント向けの「縦割り」に変化しているというものです。
これはコロナ以前にも感じていた事なのですが金融機関のデジタル化によって徐々に地域金融の役割というのは変わってくるのではないかと思っていました。
今現在ではまだ、地域の中小企業に対してその地域で強い基盤を持つ地銀や信用組合などが資金繰りに果たしている割合は非常に大きく、またこういった事業者相手の融資の与信判断は複雑ですのでやはり、対面で対応する必要があり、なかなかロボット化ができないといったところはあると思います。
それがここ数年、フィンテック のベンチャーを見ていると中小・中堅企業に対する融資判断のかなりの部分を機械化し、情報分析をしているベンチャーがあり、それとのオンラインでの面談を組み合わせると必ずしもその地域にいるという必要が薄れてきているのではないかと思います。
今回Finovateの基調講演で、米国の地銀のデジタル化を推進するコンサルティング会社であるCornerstone Advisors のプレゼンテーションでまさにこの部分をついていました。
すなわち地域での横割、その地域に根ざした金融の必要性が薄れてきている。ただしそれでコミュニティの必要がなくなるというわけではなく別の形のコミュニティが形成されている。つまりそれは縦割りのコミュニティなのです。
縦割りはいろいろな割り方がありますが所得層による分け方が一つ。つまり富裕層に対する金融のニーズとほんのちょっとでも貯蓄をしていかなければいけないような低所得層、中間所得層に対する金融ニーズは違います。
またそれとは別にアイデンティティによるコミュニティの住み分けをし、それに特化するフィンテック企業も登場しています。
アイデンティティとは例えば、黒人、アジア系アメリカ人などの人種、LGBT系のセグメントなど。そのニーズに特化したチャレンジャーバンクが登場しているということです。
このプレゼンでは特に、障害を持つアメリカ人のためのチャレンジャーバンク、Purple(パープル)の例を紹介していました。
障害者の場合通常の人では思いつかないような色々なハンディキャップが金融取引においても存在します。視覚障害や聴覚障害がある場合のインターフェースの工夫ももちろんですが、今回取り上げられていたパープルという銀行の場合は障害者が米国政府の社会保険庁からの障害者手当受け取りにマイナスの影響を与えることなくより多くのお金を稼ぎ、そして貯蓄するということに特化した預金口座を作っています。
画像:Cornerstone Advisors
こういった特殊なコミュニティのニーズを満たすためにはかなり難しい問題を深掘りする必要があります。ただしそれができた場合、他の多くの金融機関が過当競争に陥っている分野とは全く別のセグメントでニッチの顧客にサービスを提供することができ、「オンリーワン」となることが可能なわけです。
コーナーストーンコンサルティングでは今後もこのような事例が増えていくだろうと予想しています。
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