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  • 執筆者の写真Chako

銀行業務はすべてのサービスに組み込まれるのか

Bank4.0(邦題:BANK 4.0 未来の銀行)の「組み込み型バンキング」の章の冒頭に、他業種が銀行サービスを提供している例としてタクシー配車のウーバー(Uber)による、運転手向けのデビットカード発行の例が出ています。


Photo by Dan Gold on Unsplash

他業界が銀行業務に近いサービスを、というと「金融業を乗っ取るのか」とも取られますが、少なくともUberの場合今のところ、「金融業者」になろうという意図ではない。そうでなく、これも以前「VisaによるPlaid買収」のビデオで「フリクション」がキーワード、という解説ををしたのですがUberによる銀行カード発行もこの、「フリクションを除く」ということの一例です。以下、説明


Bank4.0より

Uber、アリババ、アマゾンなどが銀行のような業務のイノベーションを考えている
Uberは自社独自のデビットカードを発行した。
それは銀行になるということではなく、ドライバーがより早く仕事に就けるようにして、売上げを増やすためだった

(上記、この本の翻訳からは一寸わかりにくいのですが・・・)


要するに素人の運転手を使ってタクシー配車業務をしている(日本では業界規制によってやってないですが、アメリカでは個人・素人の運転手がすぐにタクシー運転手として仕事を始め、日銭を稼げる)同社が、新しく仕事を始める自社の運転手さんにデビットカードを発行してあげることによって、銀行口座を持っていなかった場合にもすぐに、仕事を始め、報酬を受け取れるようにしてあげている。


Uberのドライバーとして働いて報酬を得るには(というか普通、どんな仕事でも報酬を得るには)報酬が銀行口座に振り込まれるわけですけれどもアメリカの場合銀行口座を持っていない人がかなり多い。


そこで通常であれば、銀行支店を訪れて口座を開き、さらにデビットカードを手に入れなければいけない。


これはもし無事に口座が開けたとしても、口座を開くのに数日、それからデビットカードが送付されてくるのにさらに数日かかることがあり得ます。それまで、もし仕事を始めたとしても報酬を受け取れないわけですね。


その数日がフリクション


なのです。


すなわち将来のUberの運転手さんはこれによって仕事を始めるのに数日待たなければならない。またその間、銀行の口座開設に手間取るとか、めんどうくさいとか言うことでUberの運転手になるのをやめてしまうと言うこともあり得る。


そういったフリクションを回避してあげることで、Uberの運転手としての業務を始めやすい。裏返せば同社にとっては、ビジネスの拡張の1番の鍵となる運転手獲得に効果があるのが、金融取引の簡単さであり、これを提供してあげているわけです。


なので上記は、既存の銀行・金融機関にとっても(また日本での事例を考える上でも)、脅威と取るより非常に参考になる例だと思います。もし、Uberが独自のデビットカード発行に踏み切る前に「新規の運転手には報酬を受け取る銀行口座が必要」というニーズに気づき、フリクションのない口座開設を同社に提供する金融機関があれば一躍、新規の口座獲得の強力なツールとなり得ていたわけです。(注)


(注)BANK 4.0によれば、

独自のデビットカード発行により、Uberはいきなり、米国における中小企業銀行口座獲得数で最大級の存在となった。



著者について

 

 

在米30+年、サンフランシスコ近郊在住の金融戦略コンサルタント。主に日本の金融業向けに米国フィンテック事情・フィンテック・ベンチャーを参考とした金融イノベーション戦略、ベンチャー提携サポートを提供。

証券・銀行・投資業務・フィンテック・ベンチャー参加を経て独立。

東京外国語大学卒業、スタンフォード大学MBA。

 

ダイエットに苦戦中。

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